ニットと毛玉
ニットの宿敵とも言える毛玉ですが、残念ながらニットである以上、これを完全に防ぐことはできません。
強撚糸を使ったハイゲージなどは、かなり毛玉ができにくいですが、やはり完全にというわけにはいきません。
着用頻度や素材によっても毛玉の出来具合は異なりますが、毛玉との上手な付き合い方もニットを楽しむ上で重要な要素になります。
ちなみに毛玉のことをピルと言い、毛玉ができることをピリングと言います。
セーターなどで「抗ピリング加工」などと書かれている製品がありますが、これは毛玉になりにくい加工を施してあるということです。
なぜ毛玉はできるのか?
毛玉の原因は主に摩擦です。着用時はもちろん、洗濯時やカバンなどと擦れることも原因の一つとなります。
特に撚りの甘いざっくりセーターや、柔らかい素材をつかっているものはデリケートな為、毛玉になりやすいです。
また、静電気のおきやすい化学繊維との組み合わせで毛が絡み合い毛玉の原因になることもあります。
毛玉の防ぎ方《1日着たら数日休ませる》
先にも述べましたが、ニットである以上、毛玉を完全に防ぐことはできません。
しかし、毛玉になりにくい扱い方や、毛玉をなるべく作らないようにする工夫はあります。
まず、どんなにお気に入りのニット製品でも、連続して着用することは避けましょう。
1日着たら1~3日休ませるなど、ローテーションを組んで着まわす事はとても効果的です。
着用頻度が高ければ摩擦の頻度も高くなりますし、汚れれば洗濯頻度も高くなります。
そうなると摩擦の機会が増え、毛玉の危険は高まります。
ニット製品は必ず毛玉ができるものとして認識するだけでも扱い方は変わるはずです。
吸湿性がすぐれたウールやコットンなどの天然繊維は、吸収した湿気を発散することで虫食いやカビを防ぐこともできます。
大好きなニットを長く着る為にも「1日着たら数日休ませる」。ローテーションはとても大事です。
毛玉の防ぎ方《洗濯は手洗いで》
ニットの洗濯方法の基本は手洗い・押し洗いです。
どんなに強撚糸を使ったハイゲージでも洗濯機でガランガランと回しては繊維が絡まりやすく毛玉の原因になります。
そこで、セーターなどは裏返して畳み、桶や洗濯層でやさしく押し洗いをすることをオススメします。
やさしく愛情を持ってニットをお手入れすることで、大幅にニットの寿命は長くなります。
詳しい洗い方は下の「ニットの洗い方」を併せてご確認ください。
毛玉の防ぎ方《ブラッシング》
毛玉の原因は摩擦による繊維の絡み合いですから、着用後のブラッシングは毛玉対策に効果的です。
毛足の長いデリケートな素材には豚毛などの毛の長いブラシ、コットンなどにはエチケットブラシが最適です。
毛が金属製の毛玉取りブラシもありますが、力を入れすぎると毛玉以外の糸まで傷めてしまうので注意が必要です。
ブラッシングの方法ですが、編地の地の目に沿ってやさしくブラッシングします。
こうすることで毛羽の絡みがほぐれ、毛並みが揃うだけでなく、ホコリも取れます。
手遅れになる前にケアすることが大事ですから、着用前や脱いだ後にマメにチェックするようにしてください。
毛玉の取り方
それでも毛玉ができてしまった場合は、丁寧に毛玉を取りましょう。 カシミヤなどの良い糸の場合は、毛玉になってもセーターを振るだけで落ちてくれることもありますが、 たいていの場合はハサミや毛玉取り器などで丁寧に取る必要があります。
毛玉を切る時は回りの糸や生地まで切らないように気をつけてください。 眉毛ハサミなどの小さいはさみを使うと切りやすいです。 変に引っ張ったりちぎると、さらなる毛玉の原因になります。 毛玉を切るときに回りの糸まで傷つけてしまいそうなときは、ガムテープなどで毛玉を引っ張りながら切ってください。 毛玉取り器を使う場合も、まわりの糸や生地を傷めないように気をつけてください。
洗えるニットの見分け方
セーターなどに代表されるニット。ソフトで柔らかなデザインやデリケートな素材も多い為、クリーニングに出すことも多いと思います。
しかし、しっかりとした知識を持てば、実は自宅で洗えるニットも多くあります。
衣類についた洗濯絵表示を理解し、洗えるものと洗えないものの区別ができれば、大好きなセーターを大事に、そして長く長く付き合うことができます。
洗濯ができる印(記号・マーク)
洗濯絵表示に、洗濯機をあらわす四角い記号や手洗いのマークがついていれば、それは自宅で洗えるということです。
ただし手洗いマークが付いている場合、「手洗いは可能だが、洗濯機では洗ってはいけない」という意味なので洗濯機の利用は不可ということになります。
数字は水の温度の上限を表し、40とあれば「40度までの水温で洗うのが良い」という意味です。
決して40度で洗わねばならない、という意味ではありません。30であれば「30度までの水温」です。
また、この記号に「弱」と書いてある場合は、洗濯機であればば弱水流で(ドライモードやオシャレ着洗いモード)、手洗いであれば弱く手洗いしてくださいという意味になります。
このほかに「中性」と付記があれば、酸やアルカリの強い洗剤を使うと生地が傷むおそれがあるため、洗剤は中性洗剤を使ってください。
「ネット使用」の付記がある場合もありますが、この場合はネットに入れて洗濯してください。
そのほかの洗濯表示については下の一覧「洗濯絵表示について」をご確認ください。
洗濯ができない印(記号・マーク)
この洗濯絵表示が付いている場合は「水洗い不可」ですが、素材などによっては自宅で洗濯できるものもあります。
その判断基準の一つは素材。綿・ポリエステル・ナイロン・アクリルなどの素材の製品の中には、ドライマーク用洗剤を使い、洗濯機のドライマーク対応コース、またはつけ込み洗いで洗うことができるものがあります。
ただし、強くよじった糸を使っていたり、シワ加工やプリーツ加工など洗うととれてしまうような加工がされているもの、
起毛されているものや毛足が長いもの、芯地を使っているもの、色落ちしやすいものなどは自宅での洗濯は避けクリーニング店にまかせたほうが良いです。
シルク(絹)、レーヨン、キュプラ、アセテート、またこれらの混紡なども、やはり自宅での洗濯は避けクリーニング店にお願いしましょう。
ウールや麻、ポリウレタン、ダウンも自宅で洗える場合がありますが、ウールは30度以下の水で、ダウンは水に浮く為手洗いで、など洗濯方法に注意が必要です。
洗濯絵表示と併せて、ドライマーク洗剤の取り扱い説明をよく読んでお使いください。
ニットを洗うための基本準備
洗濯絵表示や素材を確認し、自宅で洗えるものかどうかがわかったら、ちょっとした工夫と準備をしましょう。
洗濯用洗剤
ニットの洗濯には中性洗剤が好ましいです。通常の洗剤は弱アルカリ性でウールなどには強すぎてフェルト状になってしまう恐れがあります。
アクロンやエマールなどのドライマーク用洗剤は中性洗剤です。
色落ちするかどうかの確認
色落ちが心配な場合は、ドライマーク用洗剤を目立たないところにつけてテストする方法があります
5分程度したら白い布などで軽く押さえ、色が付いたものは色落ちする恐れがありますので、単独で洗ってください。
ピンポイント汚れ対策
衿や袖口の汚れや食べこぼしなどのシミには洗剤を直接つけタオルなどでやさしく押さえておくと汚れが落ちやすくなります。
洗濯用ネット
洗濯機で洗う場合、ネットに入れて洗うことで型崩れを防ぎ、繊維の傷み、縮み、毛羽立ちなども抑えることができます。
衿や袖など汚れが多い場所を表に出すように畳むと汚れ落ち度がアップします。
ニットの洗い方
セーターを手洗いする場合は「押し洗い」が基本です。手洗いは汚れ落ちを確認しながら洗える点がメリットです。
押し洗いとは、両手で押しつけては持ち上げ、また押しつける動作、つまり沈める、浮かせるを繰り返す洗い方で、洗うときから脱水まで、たたんだ形をくずさないことがポイントです。
汚れの気になる袖口やすそ部分は「つかみ洗い」がおすすめ。
つかみ洗いは手のひらでつかんだり離したりする動作を何度か繰り返す洗い方です。
手洗いの手順
1、洗剤に記載されている使用方法を確認し、桶などに洗濯液を作ります。
(目安:水4リットルに対しドライマーク用洗剤10ミリリットル)
2、洗濯液の中で20~30回押し洗いをします。このとき、揉んだり擦ったりは絶対にしないでください。沈める、浮かせるを繰り返すだけで充分です。
3、洗濯機で15秒から30秒脱水します。
4、押し洗いの要領で、きれいな水を使い、やさしく10~15回のすすぎを2回程度します。
柔軟仕上げ剤を使う場合は2回目のすすぎの時(最後のすすぎの時)に入れます。
5、最後に洗濯機で軽く15~30秒程度脱水し、形を整えて干します。
洗濯機で洗う場合
1、洗剤に記載されている使用方法を確認し、適量を洗濯機に入れてドライコース(ソフト洗い・手洗いコース)を選択して洗います。
水温は40度以下、ウールを洗う場合は30度以下で。
2、脱水は1分以内で済ませ、洗濯後はすぐに取り出し、形を整えて干します。
ニットの干し方・仕上げ方
洗濯後はすばやく干すことがニット洗濯のコツ。型崩れしたり伸びたりしないよう、形を整えてから干します。
また、ちょっとした工夫で仕上がりが変わります。
セーターの干し方
脱水が終わったら畳んで手のひらで軽く叩きながらシワを伸ばします。
重みがあるものや目の粗いものは型崩れしたり伸びやすいので、さお干しや平干しがオススメです。
直射日光に当たると焼けたり変色の原因になるので陰干しのほうが良いです。
ほとんどの場合、乾燥機は縮みの原因になりますから、タンブラー乾燥は控えましょう。
仕上げの裏ワザ
干しあがった後、アイロンを浮かせてスチームを当てるとさらにふんわり仕上がります。
押さえつけると風合いを損ないますので、注意してください。
手洗いの方法
知っていると役に立つ代表的な手洗い方法です。
押し洗い
ニットの洗い方の基本はこの押し洗いです。
桶や洗面器などにぬるま湯をいれ、洗剤を溶かして洗濯液を作り、その中に洗濯物をつけ、沈める、浮かせるを繰り返す洗い方です。
目安として20~30回繰り返した後、30秒程度軽く脱水。その後キレイな水で10~15回のすすぎを2回繰り返します。揉んだり擦ったりは絶対にしないでください。
つかみ洗い
汚れの気になる袖口やすそ部分は「つかみ洗い」がおすすめ。
つかみ洗いは手のひらでつかんだり離したりする動作を何度か繰り返す洗い方で、押し洗いの応用です。
すすぎも同じように掴んだり離したりを繰り返します。
つまみ洗い
さらに部分的な汚れを洗うときに効果的なのがつまみ洗いです。
汚れ箇所に直接液体洗剤をつけ、つまむように洗います。また、洗剤を直接つけたあとタオルなどでやさしく押さえておくと汚れが落ちやすくなります。
綿などの素材は手で揉みほぐすのが良いですが、デリケートな素材の場合は、下に生地を敷き、その上に汚れのある衣服を置き、汚れた箇所を洗剤をつけた綿棒などでやさしく叩いてください。
つけ置き洗い
頑固な汚れにはつけ置き洗いが効果的です。
洗濯槽につけ置き洗いをしたい衣服がちょうど浸るだけの水を入れ、普段よりやや濃い洗濯液を作ります。
このとき、洗濯機は回しませんが、電源は入れないと水が貯まらないと思いますのでご注意を。
つけておく時間は30分から2時間程度。この後水を足し、洗濯機でその衣服にあったいつも通りの洗い方をしてください。
通常の洗濯物なら、他の洗濯物を一緒に入れて洗っても大丈夫です。
ニットの保管方法
先にも触れましたが、ニット製品は1日着たら数日休ませることが長く着用する秘訣です。 休ませることで毛玉対策にもなりますし、湿気を発散させることで虫食いやカビ対策にもなります。 また脱いだらブラッシングをして汚れと絡みをとることも大事です。
普段もそうですが、衣替えなど長期間にわたりしまっておくときには細心の注意が必要です。 特に湿気はニット製品の大敵ですから、クリーニングに出したあとは、必ずビニール袋から出して収納してください。 風通しの良いところに収納できれば理想ですが、そうでない場合はたまに虫干ししてあげてください。
保管の際は防虫剤を一緒に入れておきましょう。 薬剤成分は空気より重いらしいので、衣類の下ではなく上に置くと効果的なようです。
洗濯絵表示について
日本工業規格JIS L 0217 繊維製品の取扱に関する表示記号及びその表示方法(抜粋)です。
記号は、1.洗い方(水洗い)、2.塩素漂白の可否、3.アイロンの掛け方、4.ドライクリーニング、5.絞り方、6.干し方の6分類になります。
(※消費者庁「家庭用品品質表示法のホームページ」より引用)
1. 洗い方(水洗い)
番号 | 記号 | 記号の意味 |
---|---|---|
101 | 液温は、95℃を限度とし、洗濯が出来る。 | |
102 | 液温は、60℃を限度とし、洗濯機による洗濯が出来る。 | |
103 | 液温は、40℃を限度とし、洗濯機による洗濯が出来る。 | |
104 | 液温は、40℃を限度とし、洗濯機の弱水流又は弱い手洗い(振り洗い、押し洗い及びつかみ洗い)がよい。 | |
105 | 液温は、30℃を限度とし、洗濯機の弱水流又は弱い手洗い(振り洗い、押し洗い及びつかみ洗いがある)がよい。 | |
106 | 液温は、30℃を限度とし、弱い手洗い(振り洗い、押し洗い及びつかみ洗いがある)がよい。(洗濯機は使用できない。) | |
107 | 水洗いはできない。 | |
付記 | 液温は、40℃を限度とし、洗濯機による洗濯ができる。 ただし、洗濯物をネットに入れて洗うのがよい。 |
|
付記 | 液温は30℃を限度とし、中性洗剤を利用して、洗濯機の弱水流又は弱い手洗いがよい。. | |
付記 | 液温は、30℃を限度とし、中性洗剤を利用して、弱い手洗い(振り洗い、押し洗い及びつかみ洗いがある)がよい(洗濯機は、使用できない。) |
2. 塩素漂白の可否
番号 | 記号 | 記号の意味 |
---|---|---|
201 | 塩素系漂白剤による漂白ができる。 | |
202 | 塩素系漂白剤による漂白はできない。 |
3. アイロンの掛け方
番号 | 記号 | 記号の意味 |
---|---|---|
301 | アイロンは210℃を限度とし、高い温度(180~210℃まで)で掛けるのがよい。 | |
302 | アイロンは160℃を限度とし、中程度の温度(140~160℃まで)で掛けるのがよい。 | |
303 | アイロンは120℃を限度とし、低い温度(80~120℃まで)で掛けるのがよい。 | |
304 | アイロン掛けはできない。 | |
付記 | アイロンは210℃を限度とし、高い温度(180~210℃まで)で掛けるのがよい。 アイロン掛けの際はあて布をすること。 |
|
付記 | アイロンは160℃を限度とし、中程度の温度(140~160℃まで)で掛けるのがよい。 アイロン掛けの際はあて布をすること。 |
|
付記 | アイロンは120℃を限度とし、低い温度(80~120℃まで)で掛けるのがよい。 アイロン掛けの際はあて布をすること。 |
4. ドライクリーニング
番号 | 記号 | 記号の意味 |
---|---|---|
401 | ドライクリーニングができる。溶剤は、パークロロエチン又は石油系のものを使用する。 | |
402 | ドライクリーニングができる。溶剤は、石油系のものを使用する。 | |
403 | ドライクリーニングはできない。 |
5. 絞り方
番号 | 記号 | 記号の意味 |
---|---|---|
501 | 手絞りの場合は弱く、遠心脱水の場合は、短時間で絞るのがよい。 | |
502 | 絞ってはいけない。 |
6. 干し方
番号 | 記号 | 記号の意味 |
---|---|---|
601 | つり干しがよい。 | |
602 | 日陰のつり干しがよい。 | |
603 | 平干しがよい。 | |
604 | 日陰の平干しがよい。 |