動物性天然繊維について
ここでは天然素材の中でも、動物性天然繊維についての基礎知識をまとめています。
毛(ウール)
羊毛はウールとも言い、羊以外の動物の毛はヘアと呼びます。
これらを総称して毛糸と言いますが、毛糸は紡績方法によって「梳毛(そもう)」「紡毛(ぼうもう)に分けられます。
さらに用途によってニット糸、織糸、手編み糸として生産されます。
天然繊維としては綿糸に次いで大量に生産・消費される身近な素材です。
繊維の王様、ウールの特長
・シワがよらない・よりにくい
繊維を折り曲げ、押さえつけても、離すと元に戻る力を可撓性(かとうせい)と言いますが、
ウールは乾いているときも湿っている時もこの可撓性がすぐれているためシワになりません。
・吸湿性がよい
他の繊維に比べて吸湿性が高く、湿った空気中では30%以上もの水分を吸収します。また放湿性も良いので取り扱いも簡単です。
・熱を逃さず暖かく、手触りも良い
熱をあまり逃がさないので暖かく、また繊維に縮れがあるので隙間に空気を蓄えていちだんと保温性に富んでいます。
伸縮性と弾性にもすぐれているので手触りが良く、型崩れしにくいのも特長です。
・よく染まる
水分と同じく染料の吸着も良く、よく染まり色もあざやかです。
繊維と染料の結合が良く、色が変わったり落ちたりすることもほとんどありません。
・長持ちして燃えにくい
着ても型崩れしにくく、ピリング(毛玉)も出来にくいなど、いつまでも新鮮な外観を保つことができる繊維です。
また、燃えにくい性質がある上、吸湿性が良く湿気を含んでいるので、火を近づけても急には燃え上がりません。
羊毛の種類
緬羊にはメリノ種、イギリス種、雑種、未改良種などの種類があり、それぞれ特徴のある羊毛を産しています。
羊毛の繊維長は1インチから18インチmなでいろいろありますが、その品種によって細毛種・中毛種・長毛種・雑種羊毛に4区分されます。
・メリノ種(細毛種)
繊細で白い毛、長さは均一で太さも揃い、一定の細かいウェーブをもった最優良種とされています。
スペインメリノを原型としたサクソニーメリノ(ドイツ)、ランブイメリノ(フランス)、アメリカメリノ、南アフリカメリノ、
オーストラリアメリノ(豪州)などがあります。これらは衣料用に多く使われます。
・中毛種
サウスダウン、ハンプシャー、シロップシャーなど10種類以上あります。
ダウン種が主体で3~5インチの短い糸がとれ、用途は主としてニット糸、手編毛糸となります。
・長毛種
ホーダレスター、レスター、リンカーンなど、いずれも6~12インチという長い繊維で、美しい光沢を持っています。太いのでニット用に多く使われています。
・雑種羊毛
一般にメリノ種とリンコルン種とを交配したものをいい、繊維の長さは5~6インチ。世界で生産される衣料羊毛の約半数が雑種羊毛です。
代表的なものにコリデール種があります。
ウールの神秘的な構造
ウールが他の繊維と異なる特長の一つは、その表皮がスケールと呼ばれるうろこ状のもので覆われていることです。
このスケールのため、繊維と繊維が絡み合い糸になってから繊維がすべり抜けることがありません。
またスケールで保護されているため、繊維が強く光沢があり、さらに水はじきが良いといった利点があります。
さらにウールには天然の縮れ(クリンプ)がありますが、このクリンプのおかげで弾力に富み、空気を含み暖かくなります。
このようにウールには天然素材が持つ構造と、それに基づく神秘的な性能に恵まれています。
羊毛以外の獣毛(ヘア繊維)
モヘア
トルコ原産のアンゴラ山羊からとった毛です。毛は長く(100~300ミリ)、羊毛のようにスケールが飛び出していないため、絹のような光沢があり、強く、弾力性に富んでいます。
30~50%くらいの羊毛と混紡するのが適当で、服地の他、ニット、ショール、帽子、装飾用織物に使われます。
カシミヤ
ヒマラヤ地方原産のカシミヤ山羊からとった毛です。カシミヤは標高の高い山地に生息しているため、自分の身を守る為に保温性の高い毛を身につけます。
毛は細くて非常に柔らかく、手触りがなめらかです。長さは38~90ミリ、スケールは羊毛の約半分で美しい光沢があります。
羊毛に比べ、かなり高価で、高級ニット糸として扱われています。
キャメル
アジア毛のふたこぶらくだの毛。昼夜の寒暖差の激しい地域で育つキャメルも自分の身を守るため保温性の高い毛を身につけています。
長さは50~65ミリで太く、色はキャメル色で脱色できません。
スケールも縮れもありますが、手触りはきわめて良く、カシミヤのようにやわらかく保温性に富み暖かい高級ニット糸です。
アルパカ
南米のペルーの山地に生息する1種の山羊の毛でこの地方だけの特産です。繊維の表面はきわめて平滑でスケールは少ないです。
クリンプもほどんど無く手触りが滑らか。太さは0.3~0.35ミリぐらいで長さは10~23センチ、時には40センチに到達するものもあります。
ビキューナ
南米のアンデス山脈にの高地にすむビキューナからとった毛です。ビキュナとも呼ばれます。
性質が粗暴で飼育が困難な上、1頭からわずか1.5ポンドの毛しか採れないため、きわめて高価となっています。
その毛は獣毛中最も細いといわれ、手触りはきわめて柔らかです。服地、ショールなどに使われますが桁違いの高値で他の繊維とは別格の扱いになっています。
アンゴラ兎毛
アンゴラ兎からとった毛で光沢が良く柔らか。毛には縮み(縮れ)がないので、それだけで紡績することは困難で、羊毛と混ぜて使われることが多いです。
長さは1年1回剪毛のもので10~13センチ。太さは0.01~0.03ミリくらい。色は純白で柔らかく滑らかですが、強度も比較的劣るのが欠点です。
ラマ
南米・ペルー、チリの山野に棲む鹿のような動物で、ラクダと羊の中間に属するところからキャメル・シープとも呼ばれます。
色は灰褐色で繊維は太く長いですが、弾力性に乏しいので羊毛と混ぜて使われることが多いです。
梳毛(そもう)と紡毛(ぼうもう)
原毛から毛糸を作るには梳毛紡績と紡毛紡績の二つの紡績法があります。
これらを総称して毛糸と言いますが、毛糸は紡績方法によって「梳毛(そもう)」「紡毛(ぼうもう)」に分けられます
梳毛(ウーステッド・ヤーン)
毛足の長い上等なウールを使い、よくすいて、繊維を直線状に引き伸ばすと同時に、平行状態に並べて撚りをかけ糸にしたものです。
細く強く撚った糸で表面がなめらかで光沢があります。
紡毛(ウーレン・ヤーン)
梳毛糸に比べ毛足の短い繊維を使い、ほとんどドラフトしないで作った糸。
紡毛紡績によって得られる糸は、縦横に交錯していて、毛羽が多く、ふっくらとしたタッチを持っています
簡単に言うと、紡毛糸は太く撚りが甘い毛羽のあるざくっとした糸です。
毛糸の太さ(番手)
恒重式でメートル式を使います。
重さ1kgで長さが1kmあるものを一番手といい、2kmあれば二番手、3kmあれば三番手と呼びます。
つまり、綿糸と同じく番手数が大きくなるほど、糸の太さは細くなっていきます。